フジロックフェスティバルに見るインバウンド観光客とアウトドアの親和性

Shogo Katayama 片山正業
6 min readAug 10, 2017

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今年も7月28日~30日の3日間、21回目を迎えたFUJI ROCK FESTIVAL ’17 に行ってきました。ここ数年間は天気がよく去年などはほぼ一滴も雨が降らない最高のコンディションでしたが、今年は事前の天気予報どおり初日から雨。結局この雨は断続的に3日間降り続き久々に雨のフジロックを味わうことになりました。

フェスティバルの音楽的感想として、今年は日本人アーティスト勢がとても良かったという印象です。日本での活動再開から初のフジロック出演で話題になっていた小沢健二を筆頭に、Counelius, Cocco, 満島ひかりの登場に場内歓喜したMondo Grosso, YUKI, 観ていませんがくるり、RADWINPS 等と、こんなにグリーンステージ、ホワイトステージの良い時間帯を日本人勢が占める回はいつぶりでしょうか。(くるりはもうひとつ小さいFeild of heaven というステージのトリでした)

個人的に楽しみにしていた The fin. 日本人バンドながらアジア系のオーディエンスが多かった

電子マネーの導入とアジアを中心とする外国人客の増加

アーティストのラインナップがややドメスティック寄りになったこととは反対に、施設や客層にはグローバル化ともいえる変化が随所に見られました。まず入場ゲートでのリストバンドチェックは昨年よりスタッフの目視からICチップでのタッチ&ゴーになっており、会場内の飲食や物販ブースもSuica やiDといった電子マネーに完全対応しました。カードや携帯をかざして買い物ができるようになったのはとても便利です。昨年も導入していたでしょうか? 記憶が定かではないのですがここまで徹底されてはいなかったと思います。外国人観光客はそこまで現金を持ってきてなかったり、中国などはWechat Pay でほぼキャッシュレスに過ごせると聞きますので、彼らにとってもストレスが軽減されたのではないでしょうか。

中国の話を出しましたが、アジア人の来場者数がかなり増えたという印象です。私の記憶する限りでは5年位前から中華系・韓国系の来場者が増え始めました。当時上海生活が長かった友人と会場を歩きながら、中国語を話す人を見つける度に方言やアクセントで「台湾」「香港」「中国」などとどこから来たのか推測していました。今回は同行しなかったのでどのエリアから来たかまではわかりませんでしたが、本当に中国語を聞く頻度は高く、韓国語よりも多かった気がします。3年ほど前には関係筋から海外のチケット販売の半分は韓国と聞いたことがありますが、既に中国・台湾・香港・シンガポールまで含めた中華圏が上回っていると感じます。

欧米系は昔から一定数いましたがこちらも若干増えている印象。フジロックはお店のスタッフともカジュアルに話を出来るのが楽しいところですが、彼らに聞いてみたところ外国人比率は20%まではいかないが10%は超えてるんじゃないかという感想でした。この外国人比率の高さはキャンプサイトでも見られ、私のテント横を行き来していく人たちもかなりの頻度で英語、中国語を話していました。3日間の総来場者数が12万5000人とのことなので、単純計算で推測するとインバウンド来場者数は1.2万~2万人近くになっている可能性があります。

前回のエントリ 2017年以降もキャンプトレンドが続く3つの理由 でインバウンド観光戦略にもアウトドアが寄与しているという分析を書きましたが、フジロックに来ることが主目的で訪日したという観光客が会場で話した台湾人やアメリカ人の中に実際いましたし、野外ミュージック・フェスティバルは今や観光コンテンツの一つとして立派なデスティネーションになっているようです。私達日本人がイギリスのグラストンベリーやアメリカのコーチェラにいつか行ってみたいと憧れるような感覚で、アジア圏の音楽・アウトドア好きはフジロックをきっかけに日本を訪れているのかもしれません。

追記:
フェスティバルも終わりしばらくすると色んなレポートが上がってきます。その中で気になったのがこちらのゴミ問題を指摘している記事。

長年フジロックを訪れているカメラマンの視点から今年は特にゴミやマナーの低下が目についたという内容です。記事中でも客層の変化を指摘していますが、今年激変したということであれば原因は客観的に考えて外国人観光客と新しく取り込んでいる若年層を指していると思われます。

海外のフェスを取材している方々のブログでも度々紹介されていますが、グラストンベリーなど世界的に知名度のあるフェスティバルのゴミはかなりひどい状態のようで、テントを現地で調達して帰りには捨てて帰る感覚です。たしかにフェス目的で海外からやってきた場合、その場限りのつもりで購入したテントを担いで帰国するのは非常に面倒です。このような問題がフジロックでも発生しているのだと思います。今後フジロックがアジアを代表するグローバルなフェスティバルになっていくと既存のフジロッカーと新規・海外からの来場者間で軋轢のようなものが必ず発生するでしょう。”クリーンさ”はフジロックを形容する大きな魅力であり価値観なので、全来場者が高い満足度を維持できるような啓蒙活動が今後の課題になっていくのだろうなと感じました。

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Shogo Katayama 片山正業

鳥取でアウトドアやシェアエコやスタートアップのことを考えたりしてます。web業界のど真ん中で色々やってました。 Founder of Wanderlust, Inc. ex-director of mixi, Inc. Founder of Listn.me, Inc. shogo@wlst.co.jp