日本の観光がアウトドアに傾き始めた -スノーピークと星野リゾートの自然観光戦略 -
2018年のインバウンド旅行者数が3,100万人超えというニュースにもある通り、現在観光は盛り上がっている業界の一つですが、中でも自然観光が今後伸びていくのだろうなと、一連のニュースを見ていて感じました。
まずこちら。先日スノーピークが白馬にグランピング・リゾートホテル「Snow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGEN」をオープンしました。宿泊価格は7万円〜10万円台と都内最高級ホテル並みです。
宿泊テントもこの施設のための特別仕様。1室限定スイート・ルームは隈研吾の設計したモバイルハウス「住箱ーJYUBAKOー」が使用されており、その他には100平米のウッドデッキ、イタリア三ツ星レストランで修行したシェフの料理、露天風呂と明らかに既存のキャンプ場とは別次元のラグジュアリー空間です。
ここまで徹底した大規模ラグジュアリー施設の誕生はアウトドア業界初なのでは、と思ったのですが、ホテル業界ではこれに先駆けること2015年に星野リゾートがグランピングをコンセプトにした「星のや富士」をオープンしています。
「星のや」は星野リゾートの最上位ブランド、こちらも2名一泊8万円前後からと高級路線です。※料金は前もって予約することで割引があるようです
庶民的で気軽な遊びが高付加価値で富裕層向け体験コンテンツに
数年前から増加傾向にあるキャンプ人口が、昨今の『ゆるキャン△』やソロキャンプ動画などのメディア効果も手伝い、オートキャンプ白書によれば2018年のオートキャンプ人口は850万人になりました。
ただキャンプ場経営の方はどうなのでしょう。一般的なキャンプ場は区画単位で利用料を払いますが、だいたい一区画数千円程度。
キャビンやコテージになると1万を超える料金設定も珍しくはありませんが、敷地は限られているだけに単価が上がらないことにはスケールしにくいビジネスモデルで、日常使いにも展開できるアウトドア・アパレルや、定期的な買い替え需要も見込めるギアの小売と違い難しいよなあ、という印象でした。
ところが数年前に起きたグランピングブームから業界の風向きが変わったように感じます。写真映えするテントに内装、シェフが作る食事などで高付加価値な宿泊体験を提供し、ビジネスの新たな可能性を感じさせました。
今回スノーピークがオープンした施設もその流れで、コト消費と言われ成長を続けているタビナカ・体験コンテンツの文脈に、既存のキャンプを代替するラグジュアリーな自然体験をあわせてきました。
前述した星野リゾートは「星のや富士」以外にも北海道トマムや八ヶ岳などで宿泊＋自然アクティビティのパッケージングが確立しており、アジアを中心としたインバウンド旅行者にも好評なようです。私も3年ほど前にトマムを訪れましたが滞在客の半分近くが中国系なのでは、と体感的に感じるほど多かったです。
インバウンド施策で日本政府観光局（JNTO）の特別顧問にもなっているデービッド・アトキンソン氏の有名な著書『新・観光立国論』でも、世界のトップ観光立国では自然観光が大きな収益源となっているというデータが紹介されており、日本は多様な自然に恵まれているので自然観光には適した国だという指摘がされています。
更に拍車をかけそうなのがairbnb が発表した新カテゴリ「アドベンチャー」。都市を中心とした旅行者向けに民泊サービス展開していた同社が、ローカルによるガイド「体験」を数年前に開始しましたが、今回その中でも冒険色の強い体験をメインに切り出しており、キャンプも当然リスティングされています。
世界の観光は今まさに”自然体験”が台頭している
・観光大国は以前より自然観光で収益を得ている
・日本は自然観光大国になれるポテンシャルを秘めている
・タビナカプラットフォームやairbnb でもアウトドア体験が人気
・グランピングは富裕層インバウンド観光客も取り込める
目線を日本国内に戻すと、プラットフォームと事業者、双方の充実が市場の活性化には欠かせないですが、機が熟した今、スノーピークの試みが観光とアウトドアの橋渡しとなり、キャンプビジネスは次のステージへと盛り上がっていくのではないかと思っています。
個人的にインバウンド×自然観光、特にキャンプ・グランピングに注目しています。
