民泊新法が施行された今なぜ簡易宿所が増えているのか

6月15日に民泊新法こと「住宅宿泊事業法」が施行されました。届け出を提出することで、年間最大180日間の民泊事業がおこなえるようになる新法ですが、色々と制約が多く届け出件数は低迷、airbnb のリスティングも施行前に8割が掲載中止になるといった状況でした。
届け出数が伸びない理由として考えられるのは、
・最大でも180日間(稼働率50%)の営業では利益が見込めない
・各自自体が条例で更に厳しく営業日数や営業可能エリアを限定している
・消防設備の設置等に追加コストがかかる
といったところだと思われます。今まで物件だけ用意して管理を運営代行会社に丸投げしていたオーナー達は、営業可能日数の減少など厳しい状況に見切りをつけて撤退しているようです。
訪日観光客の増加とともに盛り上がりを見せていた民泊ブームはここで一旦終了といった感じですが、依然観光客の数は右肩上がりに伸びており、市場の明るい見通しに対応するように簡易宿所は増えているというデータが出ています。
民泊物件にカプセルホテル、急増する簡易宿所
簡易宿所は旅館業の一種ですので、民泊新法や条例に制限されることなく通年営業ができます。建築基準法や消防法などクリアすべき条件はあるものの、新法施行により競合プレイヤーが脱落していく中で売上増加が見込めると判断したオーナー・事業者が続々と免許を取得していており、以下金沢市の事例などは非常にわかりやすいです。
だが、北陸最大の観光都市の金沢市では同日午後5時時点で届け出はゼロ。同市は住居専用地域の営業を60日程度に制限するなど規制を上乗せしている。一方、増えているのが営業日数制限がない簡易宿所だ。
金沢市の発表によると、簡易宿所の件数は5月末の時点で130件と昨年の3月末に比べて6割増えた。建設に時間のかかるホテル(4件増)より増加ペースは速い。
このように民泊新法の規制はかなり厳しく、簡易宿所が事実上日本の民泊となっていく流れができつつあります。
そんな簡易宿所ですが、実は数年前から既に増加傾向ではありました。2016年に許可基準の規制緩和が実施されたのが大きいと言われています。最近大都市で急増しているカプセルホテル、あれも実は簡易宿所です。
カプセルホテルが増えている背景はいくつか考えられます。
冒頭の写真にもあるような清潔でオシャレな内装、個室タイプの施設が増えており、従来のネガティブなイメージを払拭しました。ビジネスホテル並みの快適さで価格は3000〜1万円以下。それによりビジネスパーソンだけでなく、学生や女性の宿泊手段としても受け入れられました。
またバックパッカーなどのFIT(海外個人旅行)訪日外国人客が増加していること、ミレニアル世代の価値観にハマったことなどが考えられます。
1人旅、ビジネス出張、若者の少人数グループ旅行の宿泊先は今後どんどんこういったカプセルホテルに流れていく可能性が高いですね。
これからの民泊の在り方は?
これから新法下で民泊を行っていく場合、年間営業可能日数が著しく制限されますので、家主同居型で自宅の一部を提供するタイプでないと健全な経営を続けるのは厳しそうです。宿泊者の構成としては、カプセルホテルがカバーできない家族や大人数の訪日旅行者。
一方家主不在物件など通年営業しないと採算が合わないものは簡易宿所化していくでしょう。
既にbooking.com や楽天トラベル、じゃらん、一休、Relux などの主要な宿泊予約サイトでは民泊施設の取扱いをおこなっており、airbnb の独壇場ではないのですが、今後ますます境界は曖昧になりホテル・旅館・簡易宿所が日本の宿泊施設としてそれぞれ個性を競いあう時代になっていきそうです。