田舎街でテスラに3年乗った感想 -Tesla Model X オーナー回顧録 -

西日本のド田舎と言われる地方都市で3年ほどTesla Model Xに乗って感じたEVのメリット・デメリット、また既存の車会社とTeslaの決定的な違いについてまとめました。私のクルマ履歴としては、メルセデスGクラスからの乗り換えで初EV、自宅には他にトヨタのコンパクトカーが2台あり家族で利用という環境です。個人の感想を多分に含んでいますが、これらを前提にして読んでいただければ幸いです。

地方都市でEVに乗るということ

地方都市における車の位置づけは日常の脚として、また週末遠出旅行の心強い友として1人1台が当たり前な存在です。そんな環境において、バッテリーを自宅充電できるのはGSに立ち寄るという日々のルーティンを減らしてくれる良さがありました。燃料代(電気代)の方も、以前乗っていた車の燃費が悪かったこともありますが維持コストは削減し、環境だけでなくお財布にも優しい。一方、夜間充電し忘れると翌日の行動が激しく制限されるという、市中に充電スポットの少ない地方都市ならではの悩みがあり、何度か遠出する前日に充電を忘れてしまい妻のガソリン車で出かけるということがありました。
自宅のウォールコネクターでも数時間待てばフル充電出来るのですが、その時間が勿体なくて待つ気になれないんですよね。ドライブ途中の充電も同じ理由で、なるべくしたくない派でした。やはりサービスエリアで1時間とか待つのが勿体ない。友人と一緒に遠出したとしても充電に付き合ってもらうのは申し訳ないので、私の行動範囲は日帰りであればフル充電で往復できる範囲に自然と固定され(75Dですと実質300kmちょっと)、一泊旅行でも行きたい旅館やホテルにEV充電が無かったりして諦めるということが多々あり、遠出するときは妻のガソリン車(コンパクトカー)でという暗黙のルールができていったのでした。
この充電問題が今回乗り換えを考えた大きな理由です。

Teslaならではのサポート問題

また車検やメンテナンスが近くで出来ないというのは困りポイントで、私が住む街から最寄りのサービスセンターは大阪、提携工場は岡山のヤナセで、どちらにせよ3時間ほどかけて行く必要がありました。住む場所にもよりますが私はこれが嫌で、こちらも手放す理由の一つになりました。
Teslaが先進的なのは購入後のサポートはコールセンターに問い合わせるかたちを取っており、例えばトヨタやヤナセのように担当が付いているわけではないのです。携帯キャリアやインターネットプロバイダーのような仕組みを想像するとわかりやすいかと思います。

ただ車は不具合や車検など、何かとやり取りをする機会がありますので、都度コールセンターに問い合わせ一から状況を説明するのが面倒なんですね。電話もなかなか繋がらずストレスが溜まります。やっと話せてもどこまで経緯を把握しているか確認しながらのやり取りになり、担当が決まっていればその方に電話してスムーズに話が進むのになあと考えてしまいます。この方式にはかなり辟易しました。

EVの魅力は自動運転ではなかった

個人的に感じたEV最大の特徴はよく取り上げられる自動運転よりアイドリングが不要な点で、停車した状態でエアコンを稼働させられるのはかなり便利でした。お出かけの最中コンビニやスタバの駐車場でコーヒーを買って車内でゆっくりする、なんてことを小さなお子さんがいる家庭であればやったことがあると思いますが、エアコン無しで快適に過ごせる季節は限られているので大体ちょっと寒い・暑い思いをするか、エンジンをかけて罪悪感に苛まれながら過ごさざるを得ないわけです。アイドリング無しでエアコンをつけられるのはフィジカル・メンタル共に快適でした。やったことはありませんが車中泊にも適した機能だと思います。なのでキャンピングカーや車中泊に適したバンのEV化は絶対に需要があると思いますし、近年RVパークが増加しているのも納得がいきます。
自動運転に関しては後述しますが、現時点の機能はさほど魅力的ではありませんでした。

EV・Tesla Model Xの良かった点

・アイドリングすることなく停車中もガンガンエアコンつけられる
・AKIRAに出てくる金田の電動バイクを彷彿とさせる(個人的な感想で
す)キュイーンな加速音
・加速スピードがエグい
・税金・ランニングコスト
・車内が広い。特に6シートの場合2列目はグリーン車並みに快適。3列目 も大人が快適に座れるシートと足元スペースはあります
・車内のサウンド環境が最高
・子供受けする。ファルコンウイングや大画面モニターなど、テクノロジ ーを素直に驚いたり喜んでくれるのが嬉しい

EV・Tesla Model Xのイマイチな点

・バッテリーの航続可能距離に行動範囲が依存し遠出を控えてしまう
・充電に時間がかかる
・充電スポットが空いてなかったら、、と考え結局ノー充電で往復できる
範囲内でしか出かけなくなる
・たまにバグるので再起動が必要
・販売とサポートが完全分業しており購入後はコールセンターに問い合わ
せしないといけない
・コールセンターになかなか繋がらない
・毎回別のスタッフが出てきてやり取りのラインが統一されない
・メールでやり取りしてたのが突然SMS来たり、どこに問い合わせすれば
良いのかわからなくなる
・普段は控えめながらファルコンウイングを開けた途端に超目立つ。(大都市と田舎の視線は明らかに異なるものがあり、好奇な視線・怪訝な表情、等ネガティブなバイブスを感じまくってました)

オートパイロットは買いか?

自動運転の類はTeslaの目玉とも言えますが、あまり使いませんでした。ちなみに私は有料版のオートパイロットオプションはつけていないので無料版での話になります。
自動で駐車する機能は段差があると止まるので自宅の駐車スペースでは使えず、そもそも駐車に苦手意識はないので自分で運転した方が早いと思ってしまいました。ではどういう場面で利用したかというと、オートパイロットは基本的にハンドルから手を離してはいけないのですが、ペットボトルを開栓するくらいの動作なら大丈夫なので、少しだけ両手を使いたい時には便利です。また道幅が狭いとき対向車にぶつからないか恐る恐るすれちがうことありますよね(Model Xの全幅は2m越え)。そんな時オートパイロットは役に立ちました。要は自分に自信がない時だけお任せするスタイルですね。この辺は完全に人によりけりではあります。

現時点でEVアリ?ナシ?

さて結論として田舎でTesla、もといEVはアリかナシか?私はインフラ面とバッテリーの性能面、ふたつの問題が解消されるまでEVには戻らないと決めました。世間で言われているEVの問題点を実際体験して再確認した、という意外性ゼロなオチで申し訳ないですが。。

インフラ面というのは、市外地やサービスエリア、近隣観光地でEV充電スポットが増加すること。実は最近市内にスーパーチャージャーができ日中かなりお世話になっているのですが、郊外や宿泊施設の方はまだまだです。急速に充電スポットが増加している印象はありますので期待はしています。もう一つの問題はバッテリー容量と充電スピードの改良です。フル充電での航続距離を伸ばすこと、また充電にかかる時間の短縮。理想を言えばガソリンを満タンにする位(数分レベル)。そこまでいかずとも技術革新により日々改善はされていくと思うので、5年後位には再びEVを検討したいと思っています。

技術の発展途上段階では最新のものがあっという間に使えない代物になっていく可能性もあり、短期間での乗り換えを余儀なくされると都度の出費もかかりそうです。携帯電話みたいに気軽な機種変が車で出来る未来が訪れたら良いですが、そうでなければもうちょっと市場が成熟するのを待とうかな、と考えています。

大都市で生活していたらまた違った感想を持ったかもしれません。今回は田舎在住で果敢にアーリーアダプターになってみた結果と感想でした。

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Shogo Katayama 片山正業

鳥取でアウトドアやシェアエコやスタートアップのことを考えたりしてます。web業界のど真ん中で色々やってました。 Founder of Wanderlust, Inc. ex-director of mixi, Inc. Founder of Listn.me, Inc. shogo@wlst.co.jp